1.海外投資に従来の分散投資の常識は通じなくなった
卵を複数のかごに入れても同時に割れてしまう時代

多くの投資の教科書には「日本株」「外国株」「日本債券」「外国債券」、それから「新興国の株・債券」に分散投資をしましょうとあります。「卵は一つのかごに盛るな」というわけです。
しかし、今や複数のかごに卵を入れても、卵が同時に割れてしまう時代になりました。これは近年、異なる資産間の価格連動性が異様なほど高まっているためです。
ラッセル・インベストメントの分析によれば、2000年1月に0.4だった日本株(東証株価指数=TOPIX)と先進国株(MSCIコクサイ)の相関係数は、今年9月に0.8を超えました。相関係数は1に近づくほど、2つの相場が同じ方向に動くことを示します。
日本株と新興国株や、日本株と外国債券にも同様の傾向が見られます。「先進国がダメなら新興国」「株がダメなら債券」という単純な時代ではなくなってしまったのです。
実際、2008年の金融危機までは、まだ資産間の相関係数は低く、逆相関の関係もみられました。下の表は1997年から2008年1月までの円建て各資産クラスの相関係数です。
さまざまな資産が網羅されていますが、簡単にまとめると、
1) 日本株式は他国の株式と相関が低い(0.3程度)
2) 株式と債券は相関が低い
3) リートや商品は株式・債券と相関が低い
という関係がありました。まだ個人でも卵をかごに分散できた古き良き時代のことです。
それでは近年、なぜ資産間の価格連動性が高まったのでしょうか? 諸説ありますが、「根底にあるのは実体経済と投資マネーのグローバル化。昨年の世界貿易額は約15兆ドルと10年前の2.4倍に拡大。あらゆる上場先物に縦横無尽に投資する巨大なCTA(商品投資顧問)の登場などで、つながりの薄かった資産の間にも橋が架かってしまった」という見方が有力です。
こうした変化を受けて、投資のプロである年金運用の潮流も変わりつつあります。今では「為替リスク」「債務リスク」「市場平均以上の利益を得るためのリスク」など、リスク別に分散投資を行う新型の分散投資が台頭。
市場でどの種類のリスクが高まっているかを分析し、リスクが大きくなったら資産を原則減らし、小さくなったら資産を増やす。要諦は、徹底的なリスク管理と配分比率を毎月見直す「バイ・アンド・チェック」の考え方。個人が単純に分散投資のポートフォリオを作っても、とても歯が立つ時代ではなくなりました。
欧州発の債務危機で世界経済はまだまだ不安定
欧州問題がなかなか収束しません。11月9日にはイタリア国債の価格が急落し、10年物国債の利回りが一時7.4%台と、危険水域とされる7%を突破。国内外の懸念から買い手が極端に減少し、流動性が枯渇したところに証拠金引き上げが重なり金利が急騰しました。イタリア国債は世界第3位の市場規模があり、ギリシャの比ではありません。欧州に投資するほとんどの投資家が保有しています。皆が少しずつ持ち高を減らすだけでも大量の売り注文となり、欧州中央銀行(ECB)だけではとても買い支え切れません。
ギリシャ発の欧州政府債務危機はイタリアに延焼した後、フランスにまで火の粉が飛びだしました。火消し役であるはずの欧州金融安定基金(EFSF)さえ、当てにならなくなりつつあります。
フランスの銀行はイタリア向け与信額が多いだけに、フランスも無傷ではいられません。安全資産とみなされているドイツ国債と、かなえの軽重が問われだしたフランス国債。仏独の国債利回り格差は開く一方です。
そればかりでありません。金融危機の歯止めと期待されるEFSFが発行する債券の利回りも、仏国債に歩調を合わせて上昇。EFSF債と独国債の利回り格差も2%近くまで拡大しました。

欧州連合(EU)とユーロ圏の首脳会合は10月26日、EFSFの資金を有効活用する方策を決めました。(1)イタリアなどの国債をEFSFが部分保証する、(2)特別目的事業体(SPV)を創設し、EFSFと官民の資金を結合させ、問題国の国債を購入する――の2点が柱です。
ただし、EFSFがレバレッジを高めてリスクを増やせば、実質的に信用を供与しているAAA格のユーロ加盟国の財政負担につながります。フランスはAAA格の国の中では、財政面で見劣りします。2010年の財政赤字の国内総生産(GDP)比は7.1%と、イタリアの4.5%より大きいのです。
万一、フランスがAAAの座を失うようなことになれば、EFSFの信用基盤も揺らぎ、用意できる資金の量はぐっと少なくなります。EFSFの消火能力は一気に低下し、ユーロ圏全体が炎上しかねません。
そんなリスクを織り込む形で、仏国債とEFSF債の利回りは連動して上昇しています。日本政府はEFSF債の約2割を保有する大口投資家。EFSF債が値下がりすれば評価損を被ります。
欧州がおかれた状態は依然として複雑で見通しの効かない状況です。こうした状況の中で個人が今後の成り行きを見通すのは極めて困難です。個人が自力でタイミングの良い投資判断を下すのは容易ではありません。今日買った金融資産が、明日には暴落に見舞われるリスクも十分あるのです。資産間の連動性が高まる中、この状況では容易に投資に踏み切ることができません。
そうした状況でこそ本領を発揮するのが、自分年金作りの本命である海外積立投資なのです。
→ 2.コツコツ積立で相場の乱高下を味方につける